そそぐ This Bar is SO SO GOOD.

福岡市中央区薬院にあるBAR。世界の「カンパイ」のかたちをキュレーション。お客さまとの対話でその人にぴったりの “ 飲み方 ”を提案するBARです。

飲み方の話(2)日本酒+七味唐辛子@浅草

「飲み方研究家」にして「そそぎ手」のサイトウです。

 

僕がお酒の「飲み方」に興味をもつきっかけ「下町編」です。

※きっかけ「ややおしゃれ編」はこちら

sosogu.hateblo.jp

 

「ややおしゃれ編」では、わたせせいぞう氏のイラストをイメージして読み進んでいただきましたが、今日は「おじゃまんが山田くん」等で有名ないしいひさいち氏のマンガをイメージして読み進んでください。

 

僕がまだ若い頃、たまたま行った浅草(東京都台東区)の飲み屋さんで、みんなが日本酒に七味唐辛子をぶち込んで飲んでいました。七味を「振りかけて」とか「入れて」ではなく「ぶち込んで」です。

 

お店のレジカウンターで「日本酒を1杯」とお願いし、カップにジャバっと入れてもらいます。

「七味は?」と聞かれるので「え、あ、はい」と場に流されて答えると、七味唐辛子の小瓶を渡されます。その場で日本酒に七味唐辛子を振りかけ、お代(七味唐辛子代が多少上乗せされていました)を支払い、空いている席を探します。

 

同じテーブルに居合わせたお客様(大半が人生の大先輩)は、みなさん七味唐辛子が入ったビニール袋を日本酒のカップの傍らに置いて、豪快にぶち込んで飲んでいます。ビニール袋には「山田さん」とか名前がマジックで書いてあります。

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こんなイメージです

 

これは常連のお客さんの「七味唐辛子キープ」で、レジカウンターで名前を告げて受け取っていました。

もともと七味唐辛子は無料サービスでテーブルの上に置いてあったそうですが、みなさんがあまりにも日本酒にぶち込んで消費をするので有料のサービスになり、それでも小瓶での提供だと補充の頻度が高くて面倒だから、まとまった量の七味唐辛子を買い取ってキープする仕組みが生まれたそうです。

 

なぜ七味唐辛子を大量にぶち込むのか。

・・・はわかりません。

人生の大先輩方がおっしゃるには、「身体が温まる」「手っ取り早く酒が回って酔える」「寒い時期に酔って外で寝ても生きていられる」「冬でも家がいらない」等の効果があるそうです。

実際に日本酒に七味唐辛子を入れてグイっと飲むと、身体がポカポカ温まります。真冬でも、おでんをアテに七味入り日本酒を飲むと汗をかく程でした。

 

ロシアにペルツォフカという唐辛子入りの辛味ウォッカがあります。

ペルツォフカも浅草の七味入り日本酒同様に「凍死しないように飲む」「寒くて身体が動かない時は、ウォッカを飲んでから労働」というエピソード(都市伝説?)があります。

科学的なことは僕にはわかりませんが、寒いときにお酒の力を借りる知恵から生まれたお酒や飲み方のかも知れません。

 

この「七味唐辛子キープ」を勤務先のお店でお客様にお話すると、とっても興味をもっていただきます。実際に試したお客様もいらして、「あれやってみたよ、身体が温まるね」と報告くださいましたが、味についての言及はなかったのは「日本酒に七味唐辛子」で想像する味そのままだったからでしょうか。。。

  

残念ながらこの浅草のお店は現在ありませんが、赤羽(東京都北区)では日本酒の出汁割り(日本酒+出汁)が有名ですね。こちらは、名古屋のひつまぶしを半分ほど食べてから出汁を注ぐように、ワンカップの日本酒を半分ほど飲んで空いたスペースに出汁を足してもらいます。日本酒と出汁が香って結構旨いです。さらに七味唐辛子を入れるとまた味が変わりますよ。

 

「そそぐ」でも七味唐辛子をご用意しておきますので、試してみたい方はぜひおっしゃってください。その日のお客様のご気分にあわせて、こだわりの器でも、ワンカップのグラスでも選べるようにしておきたいと思っています。寒い日に試してみてください。

 

そそぐHP: http://sosogu.jp