「飲み方研究家」にして「そそぎ手」のサイトウです。
今回は、以前僕が携わっていたベルギービールの話を書きたいと思います。
※ベルギービール専門店で働いていた経歴はこちらに書いています↓
お店でベルギービールを飲んだことがある方ならご存知だと思いますが、ベルギービールは銘柄1つひとつに専用のグラスがあります。
ほとんどのグラスはビールのマークが印刷されており、一般的にそのマークはビールの液と泡の境目の目印の役割も持っています。
グラスの形はワイン同様に、そのビールの特徴(喉ごし、香り等)を引き出すような形状になっていて興味深い話を紹介できるとも思うのですが、この話は長くなるのでまた別の機会に書かせていただきます。
僕が働いていたベルギービールのお店では、数十種類の専用グラスの他、50ml程の小さなグラスを置いていました。
何のためのグラスだと思いますか?
正解は、ビールの澱(おり)を飲むためのグラスです。
瓶内発酵をするベルギービールは、ボトルの底に澱が溜まっています。
お客様のグラスに注ぐ時には、ボトルを垂直に立てて澱を底に沈ませ、澱がグラスに入らないようにそっと注ぎ入れます。
お客様から「澱をボトルに残すものなの?」と聞かれると、「一般的に、澱が入るとビールの澄んだ色が損なわれたり、雑味が増すこともあるので澱を入れないようにしています」とお伝えした上で、「風味が増すので澱を好むお客様もいらっしゃいます」「栄養分は高いです」とご紹介していました。
「飲んでみたい」とご興味をもったお客様には、先述の“澱グラス”に澱を入れてご提供します。
澱だけを飲むと、味がかなり濃く、苦みが強いです。この苦みが癖になる方もいらっしゃいますが、僕のおすすめは、途中で澱をグラスに足して味を変える楽しみ方です。
皆さまもご自宅でベルギービールを飲む機会がありましたら、澄んだ部分と澱の部分を味わい分けてみてください。
ただし、胃腸が弱い方には残念ながらおすすめできません。
ビールの澱の正体はビール酵母で、胃腸を活性化させる働きがあります。
瓶詰時に酵母を再添加したボトルの中で、酵母は麦汁の糖を分解してアルコールと炭酸ガスをつくります。活動を終えた酵母は栄養素を蓄えた状態でボトルの底に沈殿します。
アサヒビールのグループ会社が、このビール酵母の働きを錠剤にした整腸薬を販売しています。「なぜ飲料の会社が調整薬を?」と思う方も多かったと思いますが、僕は「なるほど、ビール酵母を活かして薬を作ったのか」と腑に落ちました。
ちなみに僕は澱を飲むとお腹が痛くなってしまうナイーブな胃腸の持ち主ですが、錠剤はそんな僕の胃腸にも優しいとホームページにはありました。ピンチの時にはお世話になりたいと思います。
「そそぐ」は、お客様の好奇心にお応えする店でありたいと考えています。胃腸に自信のあるお客様は、ぜひ「澱まで飲みたい」とリクエストしてください。
そそぐHP: http://sosogu.jp