そそぐ This Bar is SO SO GOOD.

福岡市中央区薬院にあるBAR。世界の「カンパイ」のかたちをキュレーション。お客さまとの対話でその人にぴったりの “ 飲み方 ”を提案するBARです。

飲み方の話(7)秋華賞からの数珠繋ぎ:後編

「飲み方研究家」にして「そそぎ手」のサイトウです。

 

前回から、競馬レース「秋華賞」を観て思い出したエピソードを書いています。本日はその続き。

sosogu.hateblo.jp

 

「ダービー馬の馬主になるのは一国の宰相になるより難しい」と言ったという逸話が残る英国の政治家ウィンストン・チャーチルは、競馬愛好家だけでなく、お酒(特にドライ・マティーニ)の愛好家としても有名です。

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写真はWikipedia Winston Leonard Spencer-Churchillより

 

マティーニは、ドライジンベルモットを混ぜ合わせてオリーブを添えたシンプルなカクテルです。

そしてシンプルな分、割合や銘柄の組み合わせで自分好みの味を追求する愛好家が多いカクテルでもあります。チャーチル元首相は「いかにマティーニをドライに(辛口に)飲むか」を追求しまくった変人、いや愛好家として有名です。

 

マティーニをドライに楽しむ」場合、ベルモットをドライ・ベルモットにして(逆にドライにしない場合は、スィート・ベルモットを選ぶ)、さらにドライジンの比率を高めます。一般的には、ドライジンベルモットが3:1ですが、ドライ・マティーニは4:1、ヘミングウェイの小説「河を渡って木立の中へ」には15:1という超ドライ・マティーニが登場します。

ちなみに「河を渡って木立の中へ」の主人公は、マティーニを「モンゴメリー将軍で」とオーダーします。この将軍は守りに長けていて、敵との戦力比15:1でようやく攻撃をしかける戦術をとるからです。

悪くない世界観です。そんな注文も歓迎です。「マティーニを、私の週末の睡眠時間と起きてる時間の比でください」とか。僕が一瞬面くらう可能性もありますが、強い気持ちで挑んでください。ぜひ。

 

さて。チャーチル元首相は、ベルモットの比率を下げてマティーニのドライさを追求するあまり、「ベルモットの瓶を眺めながらドライジンを飲んだ(しかも正面だと甘さが増すので、瓶を斜めに設置した)」「執事に『ベルモットベルモット・・』と呟かせてドライジンを飲んだ」「執事にベルモットを飲ませ、その吐息を嗅ぎながらドライジンを飲んだ」など、数々の変人エピソードがあります。

僕も長年カウンターの内側で、数々の変わり者(←愛着を込めて)の話を聞いてきましたが、チャーチル元首相のエピソードは群を抜いていると思います。ベルモットの吐息・・・鰻のかば焼きの匂いを嗅ぎながら白飯をかき込む感覚でしょうか。もはやマティーニなのでしょうか。それにしても、執事って大変な仕事です。

 

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写真はWikipedia Matiniより

 

マティーニと言えば、ジェームズ・ボンドが好きなカクテル」とイメージする方も多いのではないでしょうか。

僕は昔からスパイ映画が大好きで、スパイ大作戦、ミッション・インポッシブルなども欠かさず観ていますが、「007」は毎回お酒がストーリーに登場することもあり特に楽しみにしているシリーズです。「007」のおかげで、お酒が飲めない学生の頃から「マティーニ」という名前には漠然とした憧れがありました。

1962年公開の「007 ドクターノオ」からマティーニが登場しますが、ボンドは「Vodka Martini, Shaken, not stirred.」とこだわったオーダーをしています。通常ジン→ウォッカ、通常ステア→シェイク。観た時に「かっこいー」と思ったものです。

「007に出てくるお酒ファン」は僕を含めて結構数いて、カクテルレシピがあれこれ推測されていたのですが、「2006年公開 007 カジノロワイヤル」ではボンドがマティーニのレシピを指定する場面がありました。

そのレシピは「Three measures of Gordon's; one of vodka; half a measure of Kina Lillet. Shake it over ice, and add a thin slice of lemon peel.」です。カジノで駆け引きをしながら、これまたかっこよくオーダーするんです。

 

・ゴードン(英国産のドライ・ジン):90ml

ウォッカ:30ml ※通常ウォッカは入れない

・キナ・リレ (現在はリレ・ブラン):15ml ※通常はベルモット

・レモンピールの飾り ※通常はオリーブ

 

それをステアではなくシェイクして、通常よりキンキンに冷やしたボンドオリジナルのマティーニです。(このマティーニは、ボンドガールの名前からヴェスパーと命名されています)

イソイソと再現してジェームズ・ボンド気分に浸ったのは僕だけじゃないはず。

 

来年は新作が公開されますので、お酒の登場の仕方含めて今から楽しみにしています!

 

 

「そそぐ」は楽しく自由な飲み方ができるお店です。

美容室で「北川景子みたいに」「福士蒼汰っぽく」と言うのは恥ずかしいとおっしゃる方も、「そそぐ」では「ジェームズ・ボンドのカクテルを飲みたい」と堂々をご注文ください!(ただし、残念ながらキナ・リレは生産終了しておりますので、代用のリレ・ブランの入手状況によります)

快くご提供しますので、ボンドのようにお店を爆破したりしないよう、どうかご配慮願います。

 

前回・今回は「お酒にまつわる僕が好きな話」になってしまいました。

「そそぐ」ではダービーレースや映画、いろいろな縁(ゆかり)をもつ飲み方を楽しんでいただけるよう、鋭意準備中です。早く皆さまにご提供できる日がきますように。

 

そそぐHP: http://sosogu.jp