そそぐのサイトウです。
先日、イシザキとの会話の途中で「バーボンがメインのアメリカン・バーで働いている時に・・」と言ったら、間髪入れず「あら、じゃあバーボンについてブログ書いて」と依頼されました。
うっかり職歴も話せない世の中です。
そんなわけで、今回はサイトウのバーボンの想い出を書いてみます。
2021年8月末時点、ここ福岡ではお客様への酒類の提供を控えるよう指示が出ています。
この時期に、アメリカの禁酒法時代の象徴でもあるバーボンについて考えるのは奇異と言うか、皮肉と言うか。
30年近く飲食店勤務をしてきましたが、こんな日が来るとは・・・です。ほんとに。
バーボン・ウイスキーとは
改めて書くまでもないかもしれませんが、アメリカ合衆国のケンタッキー州を中心に生産されているウイスキー(アメリカン・ウイスキー)の1種です。
ケンタッキー州に「ブルボン郡」という郡(地方行政区分)があり、その地名が「バーボン」の由来になっています。
「ブルボン郡」は、アメリカの独立戦争の際にアメリカ側についたフランスに敬意を込めて、フランスの「ブルボン朝」から名付けたそうです。
へー。
ルマンドでお馴染みのお菓子メーカー「ブルボン」も、フランス菓子を意識したんだろうなぁと思って調べたところ、公式HPに「マダガスカル島付近のブルボン島(現在のレ・ユニオン島)で 採れる良質なコーヒー豆を使いブルボンコーヒーという商品名で製造販売していたことがありました」と記載がありました。意外!
バーボンに話を戻すと、「バーボン」と名乗るには、原材料やアルコール度数、製造過程に幾つも条件が決められています。
蒸留過程では、もろみを追加しながら蒸留を繰り返す「連続式蒸留機」で効率的にアルコール濃度を高めます。
熟成期間に下限はありませんが(スコッチは3年以上と決められている)、4年未満の場合はラベルに熟成期間を明記するよう決められています。※ストレートを名乗る場合は2年以上の熟成が必要
原材料にトウモロコシを含むので独特の甘みがありますが、ずしっとアルコールを感じる力強さも。
また、焦がしたオーク樽で熟成させるので、カラメルのような風味もあります。
甘い香りと風味から牛乳との相性も良く、バーボンを牛乳(生クリーム)で割るCowboy(カウボーイ)と言うカクテルもあります。
ウイスキーのラベルをよく見ると、スペルの違いに気づくと思います。
スコッチ・ウイスキーは「Whisky」、アイリッシュ・ウイスキーは「Whiskey」。
アイリッシュ・ウイスキーの流れをくむアメリカン・ウイスキーは「Whiskey」が使われています。
四半世紀前のバーボン事情
僕がアメリカン・バーで働いたのは、1995年頃。
今から25年以上も前になります。
1989年(平成元年)にウイスキーの階級が撤廃され、一気にウイスキーの価格が変わり、バーボンを含む海外のウイスキーが身近な存在になりました。そんな頃です。
1996年(平成8年)以降は、海外との交渉の結果等でウイスキーの酒税が下がるので、ウイスキーの存在がもっともっと身近になっていきます。
また、バーボンのメーカーの盛衰なのか、流通の変化なのか、よく出会うバーボンの銘柄は大きく変わりました。
働いていたバーで人気だった銘柄を幾つかピックアップしてみますが、今は見かけないものもあります。
- SUNNY BROOK(サニー ブルック)
- BELLE OF KENTUCKY(ベル オブ ケンタッキー)
- KENTURCKY COLONEL(ケンタッキー コロネル)
- KENTUCKY GENTLEMAN(ケンタッキー ジェントルマン)
- THE YELLOW ROSE OF TEXAS(ザ・イエロー・ローズ・オブ・テキサス)
- ANCIENT AGE(エンシェント エイジ)
今はスーパーでも手軽に買えるMaker's Mark(メーカーズ マーク)、当時は高級バーボンでした。
ボトルに封をする蝋の色がブラックやゴールドの限定品が出て、マニア心をくすぐられました。
長く明治屋が輸入していましたが、現在は蒸留酒生産者がサントリーのグループ会社になったようで、より日本での流通が増えたのかも知れません。
先ほど「アメリカン・ウイスキーのスペルは“Whiskey”」と書きましたが、メーカーズマークは創始者がスコットランド系のため、バーボンにも関わらずラベル表記は“Whisky”です。ここ、テストに出ます。
他にも、I.W.HARPER12年(ハーパー12年)やBLANTON’S(ブラントン)は、高級バーボンの印象が強く残っています。
ブラントンの想い出
ブラントンの名前は知らなくとも、印象的な八角形のボトルの形と競走馬を冠したキャップに見覚えがある方は多いのではないでしょうか。
1984年にケンタッキー州の州都・フランクフォートの200年を記念して誕生した、比較的新しいバーボンです。バーボン造りの名人であるアルバート・ブラントン大佐の名前にちなんでいます。
バーボンはブレンドが一般的ですが、ブラントンはシングルバレル(1つの樽から瓶詰め)であり、さらに樽番号等が手書きされているのも特別感があります。
働いていたバーが周年記念のイベントで、「ボトルキープ1本につき、無料でもう1本差し上げます」という企画を実施しました。
とても好評で、たくさんのお客様がウイスキーボトルをキープくださいました。
その際に、常連のお客様が「じゃあブラントンを。1本はスタッフのみなさんで飲んで」と粋な計らいをくださいました。
当時まだまだ若かった僕は、高級バーボンを指定して、さらに「1本はみなさんで」とさらっと言ったお客様に「カッコいーい!」と憧れを感じたものです。
しかしながら僕はその日、そのブラントンを1人で半分飲み、そのままお店で寝てしまいました。若き日の想い出です。
今はあのお客様の年齢を上回りましたが、中身は当時のままのような・・・・気がします。
そそぐのバーボン
バーボンは現在3種類を置いています。
「そそぐ」では、ハイボールのウイスキーを種別で指定していただきますが、「バーボン」はOLD GRAND-DAD(オールドグランダッド)を選んでいます。
ハウス・ワインならぬ、ハウス・バーボンのような存在です。
風味があり力強い味わいが美味しいというのが筆頭ではありますが、僕がアメリカン・バーで働いている頃からずっと変わらず日本で流通し続けるいぶし銀(?)なバーボンであることも理由です。
また、アメリカン・バーでオールド・グランダッドを選ぶお客様達は、どことなく洗練された佇まいがあった記憶があり、「そそぐ」もそんな雰囲気をもつお店にしたい願いも込めて。
僕がその佇まいを身に着けるのは難しいので、バーボン頼みです。
その他、「そそぐ」の近くにある地名「古小烏」にちなんでOLD CROW(オールド・クロウ)と、昔よく飲んだTHE YELLOW ROSE OF TEXAS(ザ・イエロー・ローズ・オブ・テキサス)。この2つは、オールド・グランダッドと比べるとキリッと尖った味わいが特徴です。ソーダで割っても美味しいですよ。
今回、ブログを書くにあたって改めてバーボンについて調べていたら、「こだわりのバーボンを造る小さな蒸留所が増えている」という記事を見ました。
いわゆる「クラフト・バーボン」です。お酒と出会った頃からの長い付き合いのバーボンも大好きですが、新しい味も取り入れていきたいですね。
いずれにしろ、ご来店くださるお客様に、このブログのような他愛のない話をしながらお酒をそそぐ日が1日でも早く訪れることを願ってやみません。
その日まで、しっかり鍛錬しておきます。
そそぐ www.sosogu.jp