「そそぐ」の「そそぎ手」サイトウです。
タリスカー10年のパッケージデザイン変更をきっかけにブログの題材にした「お酒のボトルやラベルの歴史」の後半です。
今回は、お酒のボトルの話になると、よく話題に挙がる「Ron Zacapa(ロンサカパ)」について
・ロンサカパって
ロンサカパは、中央アメリカ北部に位置するグアテマラ共和国のサカパ市で生産されているダーク・ラムです。
1976年にサカパ市が市政100年を迎えるにあたり誕生したラムなので、「ロンサカパ センテナリオ(100年の意味)23」という名前がつけられています。
※23は熟成年から。6~23年のブレンド。
公式HPを見ると、その独自の製法が紹介されています。
サトウキビの一番搾りだけを使用して生み出す自然な甘みや、2300mもの高地で熟成させることで得られる樽の風味など。
詳細は公式HPをご覧ください。読んでいるだけで「えー、おいしそう!」と思う魅力的な紹介文です。すてき。
<2022年12月追記>日本語サイトが閉じてしまったようなので、グローバルサイトへリンクを変更
自然な甘みと熟成された薫りがおいしく、「そそぐ」でも人気のダーク・ラムです。
・ロンサカパのボトル
ロンサカパのボトルがなぜ話題になるのか。
それは特徴的なモチーフ「PETATE(ペタテ)」が用いられているからです。
ペタテはマヤ文明時代から続くグアテマラの伝統工芸で、ヤシの葉を織り込んで作ったもの。かつては王朝など高い身分のみが持つことができた高貴なものだったそう。
下の写真では分かりにくいですが、ボトルには帯状のペタテが巻かれているほか、グアテマラ共和国の国花「モンハ ブランカ」が立体的にあしらっております。
今でも十分特徴的ですが、かつではボトル全体がペタテで覆われていました。
こんな感じです!
どうでしょうか。
なかなかのインパクトだと思います。
定かではないですが、僕の記憶では完全にボトルを覆っていたペタテが胴に巻き付く感じになり、徐々にその幅が狭くなって今に至っています。
・なぜペタテの面積が減った?
正確な理由は分かりませんが、バーカウンターで働いている際に、お客様や同僚から幾つもの説を聞きました。
- 昔は瓶のガラスが粗悪だったので隠すためにペタテで覆っていたが、ガラスの品質が上がって隠す必要がなくなった説
- ボトルを覆うペタテは1つの家族しか技術を持っておらず、継承されず再現できなくなった説
- 中身が見えないのをいいことに、量を誤魔化すバーテンダーがおり、中身が見えるように改善された説
聞いた時は「へー、そうなんですか!」と合点が行っていましたが、果たして正解はあったのでしょうか。世界中に出回っているラムなので、1家族のみがペタテで覆うように編んでいたのは無理がある気もします。
こんな説(逸話?都市伝説?)がたくさんあるあたり、インパクトが強い外見と、こだわった味わいで長く愛されてきた証拠とも言えますね。
地元の産業としてのボトル
今回、ブログを書くにあたって検索していたら、このロンサカパのペタテがグアテマラ共和国の女性の生活収入に寄与しているとの記事に出会いました。
かつては家庭を守るのが女性の役割だったグアテマラで内戦が起き(1960年~1996年と長く続いた)、夫が戦死した家族が貧困に追い込まれてしまった。貧困に苦しむ女性たちがロンサカパのペタテを編む仕事に就くことで、生活の安定につながったのだとか。
現在でも、約700人の女性たちがロンサカパのペタテ造りに携わっているそうです。
こんな話を知ると、お酒は地域に根付いた産業なんだなと改めて思います。
きっとバックバーに並ぶお酒1つ1つに、地元でのエピソードがあるんでしょうね。
僕はお酒を造る方ではなく、お酒をそそぐ専門ですが、ここ福岡の薬院2丁目という場所に根付き、「そそぐ」らしいエピソードを増やしていきたいと思います。
ろくでもないエピソードにならないよう注意します!