4つ目の見学は、Port Ellen(ポートエレン)蒸留所です。
歴史ある蒸留所ですが、ウイスキー造りは1983年を最後に止めてしまい、精麦所として稼働していました。1983年以前に造られた希少なウイスキーはカルト的な人気を誇り、びっくりする高値で落札されたり、Netflixの「地面師たち」で高価なウイスキーの象徴として登場したり。
数年前にディアジオ社が復活計画を発表し、ついに2024年3月に再稼働を果たしました。
見学は2024年6月に開始され、9月現在は月に1日の「PORT ELEN OPEN DAYS(無料)」と不定期の「PORT ELLEN REBORN(£200)」、食事付きのプライベートツアー(£不明)があります。
幸いにもOPEN DAYSとタイミングが合い、16:00からの回に参加することができました。
Visit Port Ellen | Whisky Distillery Tours
※蒸留所が新しいので工程の予習ができるサイトがなく、私の英語の聞き取りも難ありなので、ブログの内容に間違えあるかも知れません。ご容赦ください。
※ウイスキーの製造工程簡易版はこちら
光が差し込む明るい部屋で待ちます。映像が流れたり、オブジェがあったり素敵な空間でした。
参加者は10人程。どこから来ましたか?などの会話でスタートします。私たち以外はイギリス本島からの人がほとんどでしたが、中にはアイラ島在住のご近所さんもいました。OPEN DAYSは6月開始でまだ4回目ですので、近隣の方が参加なさるのも頷けます。
まずは粉砕から。最新式です。これまで見た数十年稼働している伝統的な粉砕機よりもローラーの数が多く、出来上がるグリストも他の蒸留所で聞いた「ハスク20%、グリッツ70%、フラワー10%」とは異なります。粉砕を微調整できる革新的な技術ならではだそう。
糖化(マッシング)を行うセミ・ラウター式のマッシュタン。
数回に分けで水(お湯)を入れるのではなく、64℃のお湯を入れたらそれを80℃まで上昇されるのみです。これが先述の革新的なグリスト製法と関連するそうですが、詳細レポートできずスミマセン。
発酵を行う木製(オレゴンパイン)ウォッシュバックが6槽。
ウォッシュバックの奥にポットスチルが見えています。
これまで見学した蒸留所は各工程で建物が別で、ピタゴラスイッチのように穴から下に落としたり、管を通って運ばれたりして次の行程に進めていました。
ここは一気通貫というか、ひとつの大きな建物の中で効率的に次の行程に進んでいるように感じます。
続いて蒸留を行うポットスチル。
残っている資料から閉鎖前のポットスチルを可能な限り再現した「Phoenix(フェニックス)スチル 」の初留・再留ペアと、それを小型化したもので実験的な取り組みを行う「Experimental(エクスペリメンタル)スチル」のペアがあります。
エクスペリメンタル・スチルと連動するスピリット・セーフは10分割する超々画期的なものだそうです。通常は前留(ヘッド)、中留(ハート)、後留(テール)の3分割なので、それが10分割になると細かいキャラクター付けができるとか。
OPEN DAYSの最後は、細かく切り出したニューメイク・スピリッツ(蒸留した段階のウイスキーの原酒)の香りを嗅がせてもらいます。最初の段階はフローラルで後半は力強いピートを感じる。気がしました。
ニューメイクは香りのみ。「PORT ELLEN REBORN」ツアーに参加すると、蒸留所の見学のほか、ニューメイクや、歴史的なカスクのポートエレン(つまり希少なアレ)を飲めるみたいです。そうなると£200/人も納得価格です。
ポットスチルを精巧に再現する等、かつてのポートエレンを大切にしつつ、「2024年の今始めるからできること」を大胆に採用した蒸留所だと感じました。
私たちのBARそそぐではポートエレンを扱っておりません(正確には「扱えておりません」)が、将来的にはぜひ置きたいです。
今日見たニューメイクがウイスキーとして日本に届くのは7年後?10年後?12年後?
ポートエレンをお客様のグラスにそそぐまで、カウンターの内側に立てるよう頑張ります。ひとつ目標ができました。飲みすぎ注意しよ。
【アイラ島への旅 Vol.1】福岡からグラスゴーへ(計画編)