アイラ島のウイスキー蒸留所の様子を記すにあたり、おおまかな製造工程を書き添えておきます。
ブログに掲載した蒸留所の写真を見て「きっとこの工程だな」って想像がつくことを目標にに書いていますので、通常の分類と多少異なる上にだいぶ雑です。ご了承ください。間違えていたらごめんなさい。
製麦(Malting モルティング)
モルトウイスキーの主原料である大麦から、麦芽(モルト)を作る工程です。
大麦のままでは糖化・発酵しにくいのですが、発芽させることで糖化酵素が活性化し、大麦が糖化しやすい状態になります。
大麦を仕込み水に浸し、根が出てきたら大麦を攪拌(かくはん)して空気に触れさせる作業を数日続けて発芽を促します。適度に発芽したところで、発芽を止めるために乾燥させます。(発芽が進み過ぎると糖化しづらくなってしまう)
伝統的な製法では、水に浸した大麦を床に広げて攪拌して発芽させる「フロアモルティング」を行い、発芽した大麦は「キルン」と呼ばれる乾燥塔でピートを焚いて乾燥させます。この焚き方が、ピートの強さを示すフェノール値(単位ppm)に大きくかかわります。
近年は自社で精麦を行う蒸留所は数少なく、モルトスター(Maltstar/麦芽製造業者)から麦芽を仕入れる蒸留所が増えています。
粉砕(Milling ミリング)
モルトに含まれる糖分を酵母に供給するために、水の中に糖を溶かし出す必要があります。そために、麦芽を細かく粉砕します。粉砕したものは「グリスト」と呼ばれます。
グリストの粒の大きさは一律ではなく、粗い「ハスク」と中間の「グリッツ」粉状の「フラワー」の3種類に分かれます。麦汁を作るにあたってそれぞれ役割があり、ハスク20% グリッツ70% フラワー10%程度に設定している蒸留所が多いようです。
糖化(Mashing マッシング)
グリスト(砕いた麦芽)に温水を加えて糖化させ、糖分を含む麦汁(ウォート)を抽出する工程です。
「マッシュタン」と呼ばれる糖化槽に、グリストと温水を攪拌し、おかゆのような状態にします。酵素が働き出し、麦芽のでんぷんが糖へ分解されます。
何回に分けてお湯を入れるか、何度のお湯を入れるか等、各蒸留所で異なるようでした。糖化が終わったら、ろ過して麦汁を抽出します。
発酵(Fermentation ファーメンテーション)
麦汁をアルコール発酵させ、アルコール分7~9%程のもろみ(発酵液、ウォッシュ)を作る工程です。
麦汁を「ウォッシュバック(発酵槽)」に移し入れ、菌の一種である酵母を加えます。まずは酵母がアルコール発酵をさせ、次に乳酸菌が糖類を分解して香味を生みます。
ウォッシュバックはステンレスや木製など、蒸留所のこだわりがあります。
蒸留(Distillation ディスティレーション)
発酵工程で造ったもろみ(発酵液)を、水とアルコールの沸点の違いを利用して蒸溜する工程です。
モルトウイスキーの蒸留では、ポットスチル(単式蒸留器)と呼ばれる機械を使用します。
アイラ島のウイスキーは、蒸留を2回行うのが一般的。1回目のポットスチルは「ウォッシュ・スチル」2回目は「スピリッツ・スチル」と呼ばれ、それぞれ大きさや首の長さや太さに個性があります。
スピリット・スチルの蒸留時に、「スピリット・セーフ」という装置を使用し、前留(ヘッド)と後留(テール)を取り除いた中留(ハート)のみを厳選します。
熟成(Maturation マチュレーション)
蒸溜液は加水して樽に詰められ、長い時間をかけて熟成されます。バーボンの貯蔵に使用したバーボン樽やシェリー樽を使用するケースが多いですが、様々なバリエーションがあります。
瓶詰め(Bottling ボトリング)
この過程は見学していませんが、長い樽詰めを終えたウイスキーは味を整えられて瓶詰めされます。
蒸留所ではなく、別の場所で行われることが多いそうです。
【アイラ島への旅 Vol.1】福岡からグラスゴーへ(計画編)